第38章 あなたを誘惑したい

松本保明はすぐに笑みを浮かべた。何か大物かと思いきや、入社わずか二ヶ月の矢野友介じゃないか。ただの下級管理職に過ぎない。

このような人物なら心配する必要もない。むしろ松本保明としては、松本渚がこんな人間とチームを組むことを願っていたので、迷わず承諾した。

「ええ、矢野部長。娘はまだ若いので、分からないことがあったら、ぜひ教えてやってください」

松本渚は口先では了承したものの、皆が去った後、ドア口に立つ男を上から下まで眺めた。

見たところ二十代前半で、かなり若い。会社での発言力はさほどないはずだ。そうでなければ、松本保明が彼を安心して寄越すはずがない。

彼女が手で招くと、矢野友介は部...

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