第56章 藤原時の怒り

松本渚はエレベーターを出たところで、一本の電話を受けた。

携帯の画面には電話番号の表示がなく、彼女はこれが暗号化された電話だと理解し、自分のオフィスに戻ってから応答した。

受話器からは男性のゆっくりとした声が流れてきた。

「相談したいことがあって会いたいんだ。今から搭乗するところで、午後五時に安城市に着く予定だ」

彼がこれほど緊急の用事を持ってくることは珍しく、松本渚はすぐに承諾した。

「わかったわ。ちょうど五時過ぎに仕事が終わるから、直接私を訪ねてきて」

彼女は位置情報を送信し、午後の業務を終えると、時間通りに地下駐車場へ向かった。

その頃、藤原時は松本グループの正門前で待機...

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