第12章

立ち上がろうとした緒方智也のネクタイを掴み、私はグイッと彼を引き戻す。

視界の隅で、小笠原玲奈が拳を握りしめているのを捉え、私は笑みを浮かべた。

「高校時代、小笠原玲奈が私にどう接していたか、知っているはずよね?」

私は彼に問いかける。

「離婚したくないって私にすがるなら、それでもいいわ。ただし、条件がある」

「彼女の借金の肩代わりをしたお金、全額回収して。それから、彼女をこの家から叩き出すこと」

小笠原玲奈はうろたえ、泣き声を上げた。

「智也、誰だって若い頃は間違いを犯すでしょ? 分かってるはずよ、私はただ、沙耶さんに冗談を言っただけだもん」

「もしそれをまだ根に持...

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