第10章

高橋健太視点

ヒルトンホテルの大宴会場は、集まった広告業界のエリートたちで煌びやかに輝いていた。俺はオーダーメイドのスーツに身を包み、ステージ上で「最優秀クリエイティブ賞」のトロフィーを握りしめていた。割れんばかりの拍手が部屋に満ちていた。

だが、俺は真実を知っていた――「本当のヒーローは俺じゃない。成実なんだ」と。

観衆に視線を走らせ、隅にいる彼女を見つけ出した。成実はシンプルな黒いドレスを着て、目立たないように座っている。それでも俺の目には、部屋にいる誰よりも彼女が輝いて見えた。

「この度はこのような栄誉をいただき、誠にありがとうございます……」俺は定型文の受賞スピーチを始...

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