第11章 慰め

彼は静かにピアノの音色が流れていくのを聴いていた。それはまるで、穏やかで癒やしに満ちた、優しいせせらぎのようだった。

綾辻詩織の指が鍵盤の上で跳ねる。その動きは真剣で、そして優しい。

ピアノ室のドアが静かに押し開かれ、背の高い痩せた人影が入ってきた。

あの少年だった。

彼はピアノの傍らに静かに立ち、遠からず近からずの距離を保っている。

その視線は綾辻詩織に注がれ、どこか冷淡で、人を寄せ付けない雰囲気を纏っていた。

綾辻詩織は彼を一瞥すると、その接近に気づいていないかのように、演奏を続けた。

ピアノの音色がゆっくりと終わりを迎えた時、彼女はそっと手を上げ、動きを止めて彼の方を振り向...

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