第13章 煙の匂いが染みつく

すでに通話が切れた携帯電話を見つめ、綾辻詩織はしばらく黙り込んだ後、榊宗佑に視線を向けた。

手話で伝える。

『榊さん、申し訳ありませんが、別荘まで送っていただけませんか』

C国行きの飛行機は夜の便だ。離婚してしまった方がむしろ好都合。何のしがらみもなく、身綺麗な状態で彼に会いに行ける。

綾辻詩織の表情からはもはや一片の脆さも見て取れず、その健気さが痛々しいほどだった。

榊宗佑は頷いたが、何も言わず、同じく手話で返した。

『わかりました』

二人は目的地に到着した。

車から降りた綾辻詩織は、とても笑顔など作れず、榊宗佑に向かって頷くだけだった。

『榊さん、ありがとうございます』

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