第32章 綾辻おばあ様が気絶する

「あらあら、ご夫婦は本当に仲がいいのね。平日なのに奥さんの妊婦健診に付き添う時間があるなんて」

娘の健診に付き添っていた中年女性が、葛城彰人を見て感心したように言った。

「俺は彼女の夫じゃない……」

葛城彰人は冷たい顔で一言説明すると、あとは構わずスマートフォンに目を落とし、仕事の処理を始めた。

流石の葛城彰人でも、この状況がおかしいことには気づいていた。

もし本当に綾辻華蓮のお腹の子に何か問題があったのなら、二人の医療スタッフが受付で番号札を取って順番待ちをさせるはずがない。

とっくに優先的に救急処置室へ運ばれているはずだ……。

それに、救急車の中で既に超音波検査を済ませており、何の問題もな...

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