第36章 倒す

「おばあ様とゆっくり話して。僕は主治医の先生に、おばあ様の容態を聞いてくるから」

その言葉を残すと、榊宗佑は祖母と孫の二人に空間を譲るようにその場を去った。

榊宗佑の姿が見えなくなってから、綾辻おばあ様は逆に綾辻詩織の手を握り返し、微笑んで言った。「あの子はいい子だね。今までずっと付き添ってくれていたなんて」

綾辻詩織は、綾辻おばあ様が手話を解さないことを知っていたので、何も言わずにただ頷いた。

すると、綾辻おばあ様の表情がふと真剣なものに変わった。「いいかい、お前はちゃんと自分の人生を生きるんだよ。決して後戻りしてはいけない」

「葛城彰人は良縁じゃない!」

厳格だった老婦人の顔は...

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