第38章 家を見に行く

「康政、お前が詩織を療養院まで送ってやれ。他の奴が送るんじゃ安心できん」

綾辻のおじさんは車の前に立ち、綾辻詩織が一言も挨拶せずに後部座席に乗り込むのを眺めていた。しばらく考えたが、彼女に助手席へ座るよう促す言葉は出てこなかった。

道中、二人は終始無言だった。

彼らが二人きりで過ごすのが、一体何年ぶりのことなのか、どちらも分からなかった。

そう思うと、綾辻のおじさんの顔に一抹の罪悪感が浮かんだ。

「詩織、戻ってきてから随分経つのに、伯父さんはまだお前に食事もご馳走してやれていないな。いつか時間のある時にでも、家族みんなで集まって食事をしようじゃないか」

綾辻詩織はその言葉に一瞬動き...

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