第60章 あなたのカードは要らない

綾辻詩織は葛城彰人の後ろ姿を見つめていた。

もう彼とは一切関わりたくない。ただ静かに自分の人生を送りたいだけだ。

綾辻詩織は躊躇なく、屋上へ続く扉に鍵をかけた。

カチャリ、という金属製の錠が下りる乾いた音が静かな廊下に響き渡り、それは葛城彰人の耳にも届いた。

葛城彰人の足が止まり、その顔は瞬く間に険しくなった。

まさか綾辻詩織が自分に会うのをここまで恐れ、あまつさえ鍵をかけるとは。

昨夜はベッドで肌を重ねたというのに、今日は顔も見たくないというのか。

得体の知れない怒りが胸の内で燃え上がり、彼は奥歯を食いしばり、拳を固く握りしめた。

駆け寄って彼女を問い詰めたい衝動に駆られたが...

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