第70章 私は良い人ではない

綾辻詩織は夏川巴の身体にある傷跡を見て、胸が締め付けられる思いだった。

彼女は夏川巴を強く抱きしめ、再び涙が溢れ出した。

『ごめんなさい……全部、私のせいで……』綾辻詩織は手話でそう示した。

夏川巴は首を横に振った。『あなたのせいじゃない……私が……自分であなたを助けようとしたんだから……』

綾辻詩織は夏川巴の傷の手当てをしようと、無意識にリュックを探ろうと手を伸ばしたが、空を切った。

その時になってようやく、リュックをいつの間にか失くしてしまったことに気づいた。

彼女は悔しそうに額を叩き、指先が額の擦り傷に触れて、鋭い痛みが走った。

今日はとことんツイてない。

夏川巴はもがき...

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