第9話

案の定、絵島紗夜が当時のことを持ち出すと、母はすっかり慌てふためき、そばにあった果物ナイフを手に取って自分の首に突きつけ、涙を浮かべて私を見つめた。

  「佐緒里、もし紗夜の代わりに罪を認めに行かないなら、ここで死んでみせるわ!」

  私が信じないのを恐れてか、彼女は鋭いナイフを首に押し当て、刃先から血の筋がゆっくりと滲み出した。

  もう少し力を入れれば、血が噴き出すところだった。

  かつて親しくだった母が、今や他人のために、自分の実の娘を死をも厭わず追い詰める。

  私の心は激しく締め付けられ、涙が止まらずに溢れ出た。

  傍らで絵島紗夜は腕を組んで、口元に得意げな笑みを浮かべていた。

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