第3章
夜が明け始めた頃、私は救助基地に戻っていた。執務室の戸口に、その姿を現したのだ。
絢紀は小さなソファで丸くなり、私のヘルメットをテディベアのように胸に抱きしめていた。眠っていても、その顔には乾いた涙の跡が筋になっていた。まだ私の大きすぎるジャケットを着ていて、袖が彼女の手を完全に覆い隠している。
「ママ」と、彼女は寝言で囁いた。
「ママ、帰ってきて」
私の心はまたしても粉々に砕け散った。この子はまだ何も知らないのだ。私が卵焼きを手に、昨夜の任務の話をしながらあのドアを通り抜けて帰ってくるのを、まだ待っている。
隅の椅子には小林沙織が座り、赤く縁取られた目で絢紀を見守っていた。彼女も眠っていない――手の中の空のコーヒーカップと、疲労と恐怖で力なく垂れた肩がそれを物語っていた。
絢紀が身じろぎし、ゆっくりと瞬きしながら目を覚ました。一瞬、ドアの方を見て、その顔に希望が灯る。
「ママ、帰ってきたの?」
彼女は素早く身を起こして尋ねた。
小林沙織の顔が歪んだ。
「絢紀ちゃん、お話があるの」
「どうしてママはまだ帰ってこないの?」
絢紀の声は小さいけれど、譲らない響きがあった。
「こんなに長く帰ってこないことなんてない。ママはいつも帰ってくるって約束したもん」
ここにいるわ、私の可愛い子。すぐここにいるのよ。
けれど絢紀には私が見えないし、声も聞こえない。彼女にとって、私は空っぽの空気でしかなかった。
小林沙織はソファのそばに膝をつき、絢紀の小さな両手を握った。彼女の頬にはすでに涙が伝っていた。
「絢紀ちゃん、あのね……あなたのママが……昨日の夜、何人かの人を助けているときに、ヘリコプターの事故があったの」
絢紀はきっぱりと首を横に振った。
「ママは運転が上手だもん。世界で一番上手だって、自分で言ってたもん」
「ええ、一番のパイロットだったわ。でもね……ときどき、一番のパイロットでもどうにもできないことがあるの。天気がすごく悪くて、そして――」
小林沙織の声が途切れた。
「ママはね、お空のずっと上、天国へ行ったの。だから、もうここには帰ってこられないのよ」
その言葉は、物理的な一撃のように絢紀を打ちのめした。彼女はしばらく小林沙織をじっと見つめ、幼い心が今聞いたことを理解しようと努めていた。
「いや」と、彼女は囁いた。そして、もっと大きな声で。
「いや!嘘つき!」
「ママはいつも帰ってくるって約束した!」
絢紀は私のヘルメットをさらにきつく抱きしめながら叫んだ。
「約束したんだもん!ママが天国になんかいるはずない!」
私は彼女の隣に膝から崩れ落ち、必死に彼女を抱きしめ、慰めようとした。けれど私の腕は、すすり泣く彼女の体をすり抜けていくだけだった。
ごめんね、私の可愛い子。約束を破って、本当にごめん。
絢紀の、魂ごと引き裂かれるような慟哭が、私の胸を張り裂いた。小林沙織が私の娘を腕に抱いたが、絢紀は彼女を突き放した。
「もしかしたら、ママは雪の中で迷子になってるのかも」
絢紀はしゃくりあげながら言った。
「私が見つけなきゃ。おうちに連れて帰ってこなきゃ」
小林沙織が応えるより先に、ドアをノックする音がした。ビジネススーツを着た険しい表情の女性が入ってくる。手にはフォルダーを抱え、いかにもお役所的といった、感情の読めない無機質な表情を浮かべていた。
「児童相談所の森田と申します」
彼女は短く、事務的な声で言った。
「榎本絢紀さんを一時保護するためにお迎えに上がりました」
だめ。だめだ、まだ早すぎる。
「行けない!」
絢紀はソファから飛び上がった。
「ママが私のこと見つけられないじゃない!」
「絢紀ちゃん、いい子だからね」
森田純子はわざとらしい優しい声で言った。
「あなたのお世話をしてくれる、素敵な家族のところへ連れて行ってあげるのよ」
「素敵な家族なんていらない!ママがいいの!」
彼らが絢紀のわずかな持ち物をまとめ始めるのを、私はなすすべもなく見ていた。絢紀は、私のヘルメットと机の上の額入り写真を荷物に入れると言い張った――去年の救助隊訓練の時に撮った、二人でカメラに向かって満面の笑みを浮かべている写真だ。
せめて、私のものが何かあの子の手元に残る。
だがその夜、絢紀には別の計画があった。
真夜中頃、私は絢紀のもとへ引き寄せられた。絢紀は児童相談所の一時保護所で夜を過ごすはずだったが、職員の目を盗んで小さなバッグを背負い、施設を抜け出していた。
どうにかして救助基地まで戻り、私が去年の夏に運転を教えた子供用のスノーモービルを引っ張り出している。
絢紀、だめ。危なすぎるわ。
しかし私は、八歳の娘が手慣れた様子でエンジンをかけるのを、恐怖と誇りが入り混じった気持ちで見守っていた。週末のレッスン中、彼女は注意深く聞いていて、すべての手順を記憶していたのだ。
「ママを連れて帰ってくるんだ」
彼女は自分に言い聞かせ、大きすぎる私のヘルメットを頭にかぶり直した。
「ママなら私を探しに来てくれる。だから、私がママを見つけるの」
スノーモービルが唸りを上げて動き出し、絢紀はそれを山道へと向けた。墜落現場への道は知っている――何年もの間、無線でその座標を何十回も耳にしていたのだから。
引き返して、私の可愛い子。お願いだから、引き返して。
だが絢紀は、何よりも意志が固かった。私の頑固さと、愛する人を決して諦めないところを受け継いでいる。
一日中不穏な空模様だったが、絢紀が山を高く登っていくにつれて、ついに嵐が牙を剥いた。雪が激しく降り始め、風が強まる。一時間も経たないうちに、絢紀はホワイトアウトと戦っていた。
スノーモービルが音を立てて止まった。
燃料切れだ。絢紀は何度か再始動を試みた後、徒歩で進むしかないと悟った。彼女はシェルターが必要だと知るくらいには賢く、私が教えた山中でのサバイバル術を覚えていた。
動物が掘ったであろう小さな雪洞を見つけ、私のヘルメットを胸に抱きしめて中に這い入った。
「ママ、怖いよ」
彼女は暗闇に向かって囁いた。
「ママが教えてくれたみたいに、勇敢になろうとしたんだ」
あなたは勇敢よ、愛しい子。世界で一番勇敢な女の子よ。
絢紀は静かに歌い始めた――悪夢を見て眠れないときに、私がいつも歌ってあげた子守唄だ。声は細く震えていたが、歌詞は一言一句覚えていた。
「あなたは私のお日様、たった一つのお日様……」
私はその小さな洞窟で彼女の隣に座り、この腕で彼女を包み込み、温かく安全に守ってあげられたらと、心の底から願った。代わりに私にできるのは、彼女が震えながら涙をこらえるのを見守ることだけだった。
「ママ、ここにいるの?」
絢紀は突然囁き、暗い洞窟を見回した。
「なんだか……ママが一緒にいてくれるような気がする」
ここにいるわ、私の可愛い子。いつだってここにいる。
ほんの一瞬、絢紀は私の存在を実際に感じ取ったかのように、リラックスしたように見えた。彼女はさらに体を丸め、私のヘルメットを枕にして、目を閉じた。
ー
救助基地では、夜明けとともに絢紀がいなくなったことが発覚した。
「一晩中いなかったんです!」
小林沙織のパニックに陥った声が無線で響き渡った。
「今すぐ捜索隊を出してください!」
しかし嵐はまだ荒れ狂っており、ヘリコプターでの救助は不可能だった。地上部隊も安全に移動できる範囲が限られている。
そのとき、電話が鳴った。
「山岳救助隊、こちら渡辺です」
「捜索に追加の資源を提供したい」と、私がすぐに聞き覚えのある声が言った。「金、装備、必要なものは何でも」
「失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
間があった。
「ただ、あの小さな女の子を見つけることを気にかけている者だ」
渡辺昭。
新しい装備と、ほとんど一夜にして現れた追加の人員で救助隊が準備を整えるのを見ながら、私の胸に必死の希望が芽生えた。
見つけて、渡辺昭。どうか、私たちの娘を見つけて。







