第5章

絢紀は目を大きく見開き、警戒するように渡辺昭の顔を見つめていた。まだ八歳だというのに、あの子は人を見る勘がいい。私がいつも教えてきたことだった。

「こんにちは。気分はどうかな?」

渡辺昭が、私が今まで聞いたこともないような優しい声で尋ねた。

絢紀は病院の布団を顎まで引き上げた。

「あなたは誰?小林隊長はどこ?」

「小林隊長は基地に戻って、捜索隊の指揮を執っているよ。僕は……」

渡辺昭は言葉をためらい、選択肢を吟味しているのが見て取れた。

「僕は救助隊の友人でね。君が無事か確かめたかったんだ」

絢紀は首を傾げ、何一つ見逃さないあの鋭い瞳で彼を観察した。

「救助隊の人...

ログインして続きを読む