第108章 サーキット事故

月岡古雅は余計なことは一切訊かなかった。車のキーと出場用のリストバンドを受け取ると、踵を返し、そのままスタートエリアへ向かう。

スタッフの目の奥に宿る不自然さは、一目で見抜けた。だが、それより月岡星也のほうが大事だった。

運転席に滑り込んだ瞬間、指先がステアリングに触れ、車載システムが自動で立ち上がる。

――ほんの一瞬。

それだけで、出力の引っかかりがわかった。コースの位置情報も、わずかに遅れて追従してくる。

月岡古雅は振り返ってスタッフを見た。

相手は、露骨に視線を逸らした。

この態度じゃ、訴えても返ってくるのは沈黙だけだ。

月岡古雅はスマホを取り出し、指を飛ばして柊木禅司...

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