第17章 自ら墓穴を掘る

月岡古雅は料亭・錦秋の入口に立ち、手を上げてキャップのつばを軽く押さえた。顔の大半が影に沈む。

店内は絢爛そのもの。シャンデリアの光がきらつき、目がくらむほどだ。

ひとつ深呼吸して、月岡古雅は廊下の奥へと足を進めた。

「水雲」の個室は三階の最奥。近藤いわく、原田佐介がかなりの人数を連れて周辺を固めているらしい。

油断はできない。足音を殺し、呼吸を落とし、気配を薄くする。

個室まで残り十メートルほどの地点で、男たちが数人、たむろしているのが見えた。周囲をうかがう視線が、やけに鋭い。

引き返そうと身を翻した、その瞬間。

背後から鋭い怒声が飛んだ。

「待て!」

月岡古雅の瞳が冷え...

ログインして続きを読む