第55章 平和賞

柊木禅司は黒のスーツに身を包み、その姿勢の良さがいっそう際立っていた。

ゆっくりと歩み寄ってくるだけで、さっきまでざわついていた会場がすっと静まり返る。招待客たちは息を呑み、驚いたように来訪者を見つめた。

彼はまっすぐ月岡古雅のそばまで行くと、書類一式をアイラに差し出した。

「今年のノベラ平和賞、内部の推薦候補リストだ。月岡古雅はグリーンケミストリーと環境保護分野での顕著な貢献が評価され、候補に入った」

今日ここへ来たのは、月岡古雅にその吉報を伝えるため――ただ、それだけだった。

本来、環境問題など彼の関心の外にある。

けれど月岡古雅に関する情報だけは、取りこぼしたくなかった。

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