第56章 毒

その日はあっという間に終わった。

夜気にほんの少し冷たさが混じる。月岡古雅はこわばった肩を揉みながら、柊木禅司が脱いだ上着を自然に受け取り、そのまま肩に掛けた。

禅司は手を伸ばし、彼女の襟元をそっと整える。

「送っていく」

古雅は首を横に振り、やわらかく笑った。

「一日中パソコン見てたから目が疲れちゃって。少し歩いて、風に当たりたいの」

禅司は小さくうなずく。

二人はそのまま、海沿いの小道を並んで歩きだした。

街灯が地面に細長い影を二本落とし、繋いだ手だけがやけにあたたかい。

けれど、その穏やかさは長く続かなかった。

古雅の笑みがふっと止まる。彼女は道端の茂みを指さした。...

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