第66章 誘拐

月岡古雅がトロフィーを抱えてホテルを出たとき、柊木禅司はすでに長いこと待っていた。

人の波の中で、ひときわきらめく彼女を――ただ黙って見つめて。

ようやく古雅が出てきた、その瞬間。

言葉を交わす間もなく、着信音が鳴った。

画面には見知らぬ番号。発信地も不明。

胸の奥がざわつく。けれど古雅は息を整え、通話を取った。

『月岡古雅。お前の母親はこっちで預かってる』

耳に刺さる、粗く歪められた声。凶悪な調子だった。

『生きて返してほしけりゃ、クラウンを持って来い。余計な真似はするな。警察に通報したら――殺す』

全身の血が、ひゅっと冷えた。

それでも古雅は、自分を叱りつけるように冷...

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