第68章 選択を迫られる

月岡古雅はこの数日、誘拐犯と何度も電話でやり合っていた。

あらゆる手を尽くして揺さぶりをかけたが、結局は主導権を握れないまま。

「分かった。今夜、黒尾山へ行く。母の安全だけは保証して。もし母に何かあったら……絶対に許さない」

受話器の向こうで、男が鼻で笑った。

「条件を出せる立場かよ。夜八時だ。お前の姿が見えなきゃ――二度と母親に会えねえぞ」

通話は切れた。

月岡古雅は大きく息を吸い込み、玄関へ向かおうとした――その瞬間。

柊木禅司からメッセージが届いた。

『今夜8時、外に出るな』

続けて、北野一徹からも着信が入る。

……

夜八時。

月岡古雅は黒尾山に立っていた。

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