第109章 上陸

二日後、早朝。

濃い霧のなか、古びた漁船がのろのろと進んでいた。相沢千夏は船室の外に立ち、白一色の世界を見渡す。視界は数メートル先で途切れ、方角すら掴めない。

目立たないよう、漁師の漁船を丸ごと借り、K市の港から南へ。

「あとどれくらい?」

千夏が振り向いて訊くと、エミヤは船室の縁にもたれ、目を閉じたまま答える。

「たぶん、もうすぐ。あと三十分もすれば島影が見えると思う」

相沢千夏は小さく眉を寄せ、彼女を一瞥してから、手元の地図へ視線を落とした。

隣には氷川隼人。警戒を崩さない目つきで霧の向こうを睨み、腰には小型拳銃を二丁、隠し持っている。何かあれば即応できる構えだ。

さらに...

ログインして続きを読む