第118章 さよなら

氷川隼人が思わず声を上げた。羽田悠を見つめる。いつも冷静な青い瞳が、今は大きく揺れていた。

「氷川さん……」

羽田悠は苦しげに顔を上げる。口元から血が滲んでいるのに、どこか解放されたように笑った。

「僕のことはいい。彼女を連れて、逃げてくれ」

「これで……僕も、あんたに借りはない……」

次の瞬間、傷口から血が噴き上がった。泉みたいに溢れ、服を真っ赤に染め、床へぽたぽたと落ちていく。

警備たちは目を見開いたまま固まった。誰も、こんな展開を予想していなかったのだ。

東沢優理も呆然とし、反応が遅れる。

相沢千夏の目が赤く滲む。

羽田悠とは面識すらない。それでも彼は、こちらを困らせ...

ログインして続きを読む