第142章 イヤリングをなくした

栗山弥希は身体を強張らせ、手をぎゅっと握りしめた。口を開いた声は、自分が思っていたよりずっと硬い。

「……なんで、あんた? どうやって入ってきたの?」

一拍置いて、視線が男の顔に落ちる。

「何しに来たの?」

酒井陽介は扉口に立ったまま、答えない。

今日は珍しくスーツ姿だった。シャツの襟元はきっちり整えられ、髪も手入れされている。いつもよりずっとちゃんとして見える――のに、目だけが違った。誰にも隠しようのない、沈んだ色を湛えている。

その視線に射抜かれると、胸の奥がきゅっと縮む。

栗山弥希は動かず、真っ直ぐに見返した。警戒を滲ませた声で言う。

「ふざけないで、酒井陽介。今日は―...

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