第144章 割に合わないことはしない

酒井卓海は伏し目がちに栗山弥希を見下ろし、淡々と言い放った。

「両家の縁組で得られる利益なんて、俺には大してない」

「割に合わないことは嫌いだ」

相沢千夏は一瞬きょとんとした。――それだけ、なのか。

千夏は彼を見つめながら、心の中で酒井陽介と酒井卓海を並べてみて、ひそかにため息をつく。

本当に、兄弟だ。

ここまで差のある兄弟なんて、たぶん人生で初めて見た。

栗山弥希は顔を上げ、静かに酒井卓海を見返す。声は誠実だった。

「……それでも、ありがとうございます」

酒井卓海は答えない。ただ横へ半歩退き、入れと言わんばかりに道を空けた。

相沢千夏は栗山弥希の手を引いて扉の中へ入る。...

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