第165章 やはりあなたか

吸血鬼の領主はふっと足を止め、相沢千夏を一瞥すると、ゆっくりと前へ進んだ。

相沢千夏は警戒心を露わにしながら、同じように身をずらして間合いを取る。二人は向かい合い、距離を開いては詰め、詰めては離れた。目の前の男の足運びも、手の出し方も――妙に見覚えがある。

男はたまに受け流すだけで、彼女を攻める気配がない。しばらく駆け引きが続いたあと、交錯した一瞬を縫って、男がすっと懐へ滑り込んできた。近すぎる距離に、相沢千夏の眉がわずかに寄る。

――また、あの馴染んだ香り。

相沢千夏が身をよじり、拘束を振りほどいて言葉を吐き出そうとした、そのとき――

台座の紋様が一斉に光り、仕掛けが起動する轟音...

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