第170章 親族

相沢千夏は、ふいに胸がゆるんだ。

氷川隼人は彼女を見つめ、瞳の奥が一瞬だけ翳る。次の瞬間、立ち上がって彼女のほうへ歩いてきた。

相沢千夏は動かない。男が目の前で足を止めるまで。

視線が絡み合い、言葉のない時間が落ちる。しばらくの沈黙のあと、先に口を開いたのは相沢千夏だった。

「こんな遅くに、どうしたの?」

「片づいた。……こっちで不安になってるんじゃないかと思って、先に顔だけ見に来た」

氷川隼人はさらりと言って、わざと軽く流した。甘ったるい言葉は、喉まで来ていたのに飲み込む。

相沢千夏は目を細める。

「千夏は、なんで寝てない」

「眠れないの」

淡々と返しながら、彼女の脳裏...

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