第23章 野心

「氷川社長、俺たちのやり方……少し危険じゃありませんか」

木村秘書は言いかけて言葉を切り、逡巡した。

「明日の取締役会の採決が心配です。坂本家の決定的な弱みは掴めていませんし、脅しに使える材料がない。C区の案件は会社にとっても、社長にとっても重要です。あいつらに持っていかれたら……」

「わかってる」

氷川隼人はこめかみを揉み、低い声で遮った。

「だが、こんな小事で俺が潰れるほどヤワじゃない」

調べによれば、K市最大の情報ブローカー――金縁眼鏡をかけた正体不明の男は、企業の裏情報から個人の秘密まで、何でも売り捌く。大きな家の多くが取引した過去があり、氷川隼人の母も例外ではなかった。...

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