第35章 シア

「氷川奥さんって、ほんっと面の皮が厚いよね。バーでやらかして喧嘩してトレンド入りまでしたのに、『サバサバしてて素敵』とか言われるんだもん」

青木陽奈はねっとりと嫌味を絡める。

「氷川社長、人を見る目……年々落ちてません? みんな、社長の恥を楽しみにしてるんですから」

それを聞いても、氷川隼人は冷たい笑みを浮かべただけだった。青い瞳の奥で、氷のような光がきらりと走る。

言い返すより先に、小林華絵が慌てて前に出て、青木陽奈の腕をそっと引いた。

「もう、陽奈さん。言いすぎです。今日は湊の誕生日でしょう? サプライズも用意してるんですよね。早く行きましょう」

青木陽奈は鼻で笑い、こちらに...

ログインして続きを読む