第51章 珍しい

午後四時半。陽だまりはやわらかく、アトリエ・シーアンの空気はどこか家庭的にぬくもっていた。

相沢千夏はカウンターの内側に腰を下ろし、新しい香水のレシピを微調整している。向かいのハイチェアには栗山弥希が座り、花茶を両手で包むように持っていた。数日前より、表情がずいぶん軽い。

「千夏、この新作……すごくいい匂い」

弥希は鼻先をすっと動かし、身を乗り出して香りを確かめる。

「静かで、落ち着く……なんていうか……お母さんの腕の中、みたいな」

千夏の手が、わずかに止まった。けれどすぐに小さく笑い、作業を再開する。

「ある人のために作ったの。記念みたいなもの」

弥希はぱちりと瞬きした。そこ...

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