第53章 毒蛇

「蛇は……っ、私、蛇がいちばん苦手なの! なんでこんなところにいるのよ!」

「皆さん、動かないでください! 落ち着いて!」

「警備は!? 早く警備を呼べ!」

 たちまち人波が崩れた。あちこちで悲鳴が上がり、我先にと逃げ惑う。展示用に並べられていた香水瓶にぶつかる者までいて、ガラス瓶は床に落ちるなりぱりんと砕け、香りを含んだ液体がとろりと広がっていった。

 相沢千夏と氷川隼人はさっと顔色を変え、瞬時に視線を交わすと、騒ぎの中心へ目を向けた。

 床を這っていたのは、数匹の毒蛇だった。照明の下で浮かび上がるまだら模様が、ぞっとするほど生々しい。どの蛇も鈍い暗緑色の胴に、背には菱形の黒い斑...

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