第56章 変装

「先に帰っちゃった」

小林華絵はわざとらしく唇を尖らせた。

「隼人、あんなにひどい怪我までして助けたのに。本人は顔も見に来ないなんて、ひどすぎるよ」

氷川隼人は彼女を一瞥しただけで、何も言わなかった。

反対側の一人掛けソファでは、酒井陽介が背もたれに凭れてうたた寝していたが、声を聞くなりぱちっと目を開けた。

「お前、ほんと運がいいな。あんな猛毒の蛇に噛まれて生きてるとか」

陽介は、怪我をしていないほうの肩を軽く叩き、できるだけ明るい調子で続ける。

「左腕も切断まではいらないってさ。後遺症が残るかどうかは……まあ、様子見だな」

「陽介さん、そういうこと言わないでよ」

華絵はむ...

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