第97章 大混乱

相沢千夏は坂本隆也をちらりと見てから、またぼんやりと顔を背けた。何も言わない。

誰にも見えない、布団の下。相沢千夏の指は掌の肉を抉るほど、ぎゅっと食い込んでいた。そこには本来、氷川隼人が落ちる直前に彼女へ託した盗聴器が隠されていたのだ。

風見礼司に連れ戻されたとき、彼女は気絶したふりをした。風見礼司が目を離した一瞬を狙い、盗聴器を上着の内ポケットへ滑り込ませた。

「坂本さんがわざわざ、珍しいですね」

栗山弥希は眉を寄せ、不機嫌そうに言う。

「でも千夏はまだ回復してません。精神状態もよくない。大事な話なんてできませんから、お引き取りください」

「栗山さん、それはさすがに傷つきますよ...

ログインして続きを読む