第98章 俺だ

電流越しに届いた聞き慣れた声は、いつもどおり沈着で、どこか傲慢なくらい強引だった。けれど今夜は、胸が痛むほどの焦りが混じっている。

「氷川隼人……?」

相沢千夏の心臓が、止まっていた時間を取り戻すみたいに跳ねた。視界がにじみ、目の奥がつんと痛む。

「うん、俺だ」

氷川隼人は潜水艦の狭い区画に腰を下ろし、隣で笑いを噛み殺している酒井陽介を睨みつけた。

胸の傷はすでに処置済みだ。擦過傷程度。致命的な衝撃は防弾ベストが受け止めている。

「弾は心肺に届いてない。君の言うとおり、防弾ベストも着てた。海に落ちたのも角度は計算してたんだ。……ただ、酒井陽介が、君の反応を見たいとか言い出してさ」...

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