第164章

水原花子は一瞬固まった。この父親に対する印象がかなり変わった。

「でも……そんなに面倒なことを?」

「些細なことだよ」葉田城一郎は気にする様子もなく彼女の長い髪を撫でた。

「将来、婚約を解消したいと思っても、彼に借りがあるとは感じなくていいからね」

「お父さん……」水原花子は驚き、その言葉が思わず口から漏れた。

葉田城一郎は大喜びした。「もう一度呼んでごらん」

水原花子は恥ずかしくなり、俯いたまま黙ってしまった。

葉田城一郎は笑みを浮かべた。

「お前のお父さんも昔は恋に夢中だったんだぞ。当時、お母さんと少しの間離れていただけでも魂が抜けたようになって離れたくなかった。さっきの...

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