第191章

水原花子はハッとした。実は彼女も前から彼のことをあまり好きではなかったのだが、二人の置かれている状況は少し似ているところがあった。

「西村さん、気にすることないわ。生まれは自分で選べるものじゃないもの。それに西村さんの方が私より恵まれてるわ。あなたの両親は結婚してるんだから」

「そうだね。でも、周りの人はいつも僕を兄と比べるんだ。僕はいつも彼の影に隠れて生きてる」西村亮は肩をすくめて諦めた様子で言った。

「行こうか、局長に会わせるよ」

「……ありがとう、西村さん」

水原花子は少し躊躇いながらも彼について行った。彼女の背後には何万人もの社員がいる。このチャンスを逃す理由はなかった。

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