第192章

「西村達也、話がしたいの」

水原花子の澄んだ黒い瞳が西村達也に注がれた。男は両手をポケットに突っ込み、その整った端正な顔立ちは、まるで見知らぬ人を見るかのように冷たかった。

このボディーガードは彼女を見たことがなく、ただ西村さんの注目を引こうとする女だと思い込み、容赦なく前に出て彼女を突き飛ばした。

西村達也は無表情のまま長い脚を上げて階段を上がり始めた。

水原花子は痛みをこらえて立ち上がり、彼を追いかけた。

「西村達也、前にあなたが出した条件、全部飲むわ。高橋健一と彼の会社を見逃してくれるなら」

すらりとした背中が止まり、西村達也が振り返って彼女を一瞥した。だが口元には意味深な...

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