第56章

「どこに行くの?」男が不機嫌そうな視線を向けてきた。「また飲みに行くのか、それとも水原家に帰るのか、それとも先輩とデートでも?それと、裕太の消化散歩を忘れるなよ」

「……」

水原花子は言葉に詰まり、息が詰まりそうになったが、本当のことは言えなかった。

「理沙とショッピングに行くの。最近寒くなってきたから、服がなくて、買いに行こうと思って」

西村達也は彼女を上から下まで眺め、意味ありげに言った。「確かに買い時だな。厚手のを買え。いつも俺の前でそんな涼しい格好するなよ」

「……」

もう勘弁してほしい。彼を誘惑するためじゃなかったら、もう冬が近いのに、こんな薄手の部屋着なんて着ないよ。...

ログインして続きを読む