第78章

西村達也は指の間に挟まれた真っ赤な煙草を強く一吸いし、渦巻く煙を吐き出した。

彼は吸い殻を横のゴミ箱に押し付けて消すと、長い脚を踏み出して彼女に向かって歩いてきた。

「ついてこい」

彼は彼女の腕を引っ張り、レストランの反対側へと歩き出した。

水原花子は彼にワインセラーの長い廊下の奥へと連れていかれた。

中は薄暗く、男の顔が見下ろすように彼女を見つめ、形のない危険な空気が息苦しいほど彼女を圧迫した。

「何するの?」水原花子は彼の胸を押したが、どれだけ押しても動かなかった。

「それは俺のセリフだ」西村達也は彼女の手を掴み、表情は水が滴るほど暗かった。「高橋健一と楽しそうにしてたな。...

ログインして続きを読む