第88章

高橋健一は言った。

「彼は以前、長年引退していたんだが、先日突然桐市に来た。しかし、彼に頼むのは本当に難しくてね。以前、ある商業案件で彼の助けを借りようとして、60億の報酬を提示したが、それでも断られたよ」

「もちろん、彼に断られた人はあまりにも多い。商業界の名士であれ、政界の大物であれ、彼のような人間は金や権力など眼中にないのさ」

「……」

彼女は呆然として考えた。高橋健一が言っている西村達也というのは、あの西村達也のことだよね?

花子の旦那さんも確か西村達也という名前で、弁護士だったはず。

花子は旦那の稼ぎは多くても自分と大差ないと言っていた。

花子は旦那があんなに横柄で意...

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