第8章
私が救急車の後を追って病院へ向かったのは、美智を心配してのことではない。いざという時、海翔が何を選ぶのか、この目で見届ける必要があったからだ。
救急処置室の待合室で座っている間、紗織はベビーキャリアの中で穏やかに眠っていた。海翔は美智と一緒におり、中で医師たちが検査を行っている。
二時間後、彼は疲れ果てた様子で出てきた。
「容体は安定した」と、彼は私の隣にどさりと腰を下ろしながら言った。「軽い心臓発作だ。ストレス性の」
「それはよかったわ」
「恵蓮、今日聞いたことだけど……」
「どの部分かしら。彼女が何年もお前からお金を盗んでいたこと? それとも、紗織をM国人の出来損ないと...
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チャプター
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