第106章

藤原英世は杯の清酒をひと口含み、彼女を睨みつけた。

「俺の顔を立ててくれないか? 俺の恥ずかしい話、そんなに気になる?」

西原雨子はそれ以上、追及しなかった。――それは藤原英世のプライベートだ。本人が自分から話さない以上、無理にこじ開けるつもりはない。

……

夜が、いよいよ深くなる。

大村家。

大村賢也はソファから勢いよく立ち上がり、信じられないといった顔で叫んだ。

「西原雨子が西原家を出た? なんで俺、そんな話知らないんだよ!」

大村江太郎は孫を淡々と一瞥する。

「なぜ出たかは、もう重要じゃない。大事なのは――この機会に婚約を解消できるってことだ」

婚約解消?

大村賢...

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