第109章

西原雨子の箸が宙で止まり、目を見開いたまま固まった。

少ししてから、彼女はどもりながら言い返す。

「……そんなわけ、ない!」

藤原英世がくっと笑う。

「じゃあ聞くけどさ。大村賢也にとって、婚約に縛られずに動けるチャンスなんて滅多にないだろ。しかもあいつ、どう見ても自分の意思が強いタイプだ。なのに、なんでわざわざ西原七海に近づく? しかも、あんなに自然に」

西原雨子は言葉を失った。長い沈黙のあと、眉を寄せて藤原英世を見る。

「……なんで、私にそんな話をするの?」

藤原英世は小さく息を吐き、雨子の瞳をまっすぐ見据えた。声は低い。

「言っておきたいだけだ。君は考え方が素直すぎる。で...

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