第65章

藤原松人は、一瞬だけ目を見張った。

孫の性格は誰よりもよく分かっている。昔から落ち着いていて、自制心が強い。理性的で、時に冷酷ですらある。

そんな藤原英世が、ひとりの女にのぼせ上がる――本来なら、あり得ないはずだった。

藤原松人は複雑な眼差しで藤原英世を見つめ、低い声で言った。

「ほう? 誰だ。お前たちは、まだ付き合っていないのか?」

藤原英世は、祖父の問いにどう答えればいいのか分からなかった。

「祖父さん、とにかく俺の中では整理がついてる。だから、もう口は出さないでくれ」

曖昧にそう返すと、藤原松人はたまらず苦笑した。

「やれやれ。やっぱり大人になったということか。今じゃ、...

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