第69章

藤原英世が帰ったあと、西原雨子はしばらく資料に目を通していた。けれど、どうしても集中しきれない。

部屋の空気に、まだ彼の気配が残っている気がした。さっきまでの曖昧な熱が、消えきらずに漂っている。

――まずい。

雨子は、自分が少しずつ制御を失いかけているのを自覚した。

理性は告げる。藤原英世とは距離を置くべきだ、と。

それなのに彼の言葉や仕草は、いつまでも胸の奥に居座り、気持ちを落ち着かせてくれない。

ぼんやりしていたとき、スマホが短く震えた。

見知らぬアカウントからの友だち申請。

雨子は一瞬ためらってから承認し、メッセージを送る。

「どなたですか?」

返ってきたのは、あま...

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