第72章

電話がつながると、H市公安局の局長は藤原英世に対して、ひどく丁重で腰の低い口ぶりだった。

「当時、こちらでも一度調べてはいるんですが……手がかりがなくてですね。いまだに、あのご夫婦の実の娘さんは見つかっておりません……」局長は言いにくそうに言った。

それを聞いた西原雨子は、胸の奥がすとんと沈む。

だが藤原英世は落胆した様子も見せず、低い声で言った。

「別に、失踪した子どもを見つけろと言っているわけじゃない。俺が知りたいのは当時、病院で――いったいどうやって、子どもが取り違えられたのか、その経緯だ」

局長は数秒黙り込んだあと、「分かりました。もう一度、部下に洗い直させます」と答えた。...

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