第76章

まさか自分が、いつかスパイ映画の尾行でもするみたいな真似をする日が来るなんて。

全部、藤原英世のせいだ。

泥棒みたいにこそこそ帰宅して、西原雨子はようやく、ふうっと長い息を吐いた。

……が、ドアを開けた瞬間、藤原英世の不満げな声が飛んでくる。

「お前、俺より帰り遅いとか何なんだよ。サプライズするんじゃなかったのか?」

雨子は目を丸くする。

「誰がサプライズするって言ったの……ああ、これのこと?」

バッグからギフトボックスを取り出した、その次の瞬間。

「それ」

藤原英世がひったくるように奪い取った。

さっきまで不機嫌そのものだった顔が、ぱっと満足げに――それでいて好奇心に満...

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