第89章

藤原英世はやれやれと肩をすくめて説明した。

「彼女が嫌がるのは彼女の勝手だ。だが肝心なのは――大村賢也と婚約しているのは、お前のお母さんの実の娘だってことだ。お前にはこの縁談を断る権利がある。いいな?」

朝食を終えると、藤原英世は出ていく前に西原雨子へ念を押す。

「漢海化工には車で行け。今のお前は社長だぞ。社長がタクシーで出勤するなんて聞いたことがない」

西原雨子はむっとしながらも、渋々うなずいた。

「はいはい、分かってる」

藤原英世が去り、雨子は身の回りを整えて家を出ようとした、そのとき。

スマホの通知が、ふいに画面を弾いた。岡村宮子からだ。

「雨子さん、大村賢也さんの件、...

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