第99章

二人きりで過ごせる時間は、決して多くない。だからこそ今回のA市行きでは、彼は彼女の姿を一瞬たりとも見逃したくないとでもいうようだった。

西原雨子も今日は特に用事がなく、あっさり了承する。荷物をまとめ、三人で出発しようとした、そのとき。

羽村がふいに声を上げた。

「お爺さん!」

西原雨子が振り向く。庭木に視界を遮られ、杉浦家のお爺さんの顔ははっきり見えない。ただ、杖をつき、背を丸めたその姿だけが目に入った。ひどく年老いて見える。

杉浦憲之介が、藤原英世へ手招きする。

藤原英世は西原雨子に顔を向けた。

「杉浦お爺さんから、何か伝言があるみたいだ。少し待っててくれるか」

西原雨子は...

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