第11章 許せない自分
渋谷区の閑静な住宅街に佇む、重厚なデザイナーズマンション。そのセキュリティの固そうなドアの前で、田中健太はもう三時間も立ち尽くしていた。インターホンを鳴らし続け、分厚い金属のドアを叩き続けても、何の応答もない。
「中にいるのはわかってる!開けろ、松原!」
田中健太は再びドアを数回、拳で強く叩いた。鈍い音が無機質な廊下に響き渡る。
ドアの向こうは、しんと静まり返ったままだ。
田中健太は深く息を吸うと、冷たいドアに額を押し当てた。親友である松原一也と連絡が取れなくなってから、もう一週間が経つ。
松原一也の妻、はるかが亡くなったという報せが届いて以来、一也はまるで煙のように姿...
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チャプター
1. 第1章 無視された愛
2. 第2章 触れられない距離
3. 第3章 裏切りの恋人
4. 第4章 遅れてきた深情
5. 第5章 最後の賭け

6. 第6章 永遠に恥じる

7. 第7章 残された人が一番苦しい

8. 第8章 重い思い出

9. 第9章 こまめの付き添い

10. 第10章 永遠の苦しみ

11. 第11章 許せない自分


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