第5章 最後の賭け
渋谷のあるカフェで
はるかは約束の時間より少し早く着き、窓際の席を選んだ。病の影が落ちる顔を隠すように、首元を覆うシルクスカーフにそっと指を滑らせる。
「ごめんなさい、はるか!待たせちゃった?」
明るい声に振り返ると、華やかなオーラをまとった鈴木紗織がこちらへ歩いてくるところだった。プラダとひと目でわかる限定品のワンピースに、エルメスと思しきスカーフ。耳元にはシャネルのパールがきらめいている。その眩いばかりの輝きは、今の憔悴しきった自分とはあまりに対照的だった。
「……お久しぶり、紗織お姉様」
はるかは囁くように言うと、どうにか口角を引き上げてみせた。
鈴木紗織は優...
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チャプター
1. 第1章 無視された愛
2. 第2章 触れられない距離
3. 第3章 裏切りの恋人
4. 第4章 遅れてきた深情
5. 第5章 最後の賭け

6. 第6章 永遠に恥じる

7. 第7章 残された人が一番苦しい

8. 第8章 重い思い出

9. 第9章 こまめの付き添い

10. 第10章 永遠の苦しみ

11. 第11章 許せない自分


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