第5章 最後の賭け

渋谷のあるカフェで

はるかは約束の時間より少し早く着き、窓際の席を選んだ。病の影が落ちる顔を隠すように、首元を覆うシルクスカーフにそっと指を滑らせる。

「ごめんなさい、はるか!待たせちゃった?」

明るい声に振り返ると、華やかなオーラをまとった鈴木紗織がこちらへ歩いてくるところだった。プラダとひと目でわかる限定品のワンピースに、エルメスと思しきスカーフ。耳元にはシャネルのパールがきらめいている。その眩いばかりの輝きは、今の憔悴しきった自分とはあまりに対照的だった。

「……お久しぶり、紗織お姉様」

はるかは囁くように言うと、どうにか口角を引き上げてみせた。

鈴木紗織は優...

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